2005 FISA 世界ボート選手権 in 長良川

rescue1232005-09-05



アジアで初開催になる2005世界ボート選手権大会に、WRMAのジェットレスキューのインストラクターとして派遣され、ボランティアスタッフとして参加してきました。この大会はボート大会ではオリンピックなどよりも大きなもので、各国のクルーは自国の威信をかけて参加してきます。1週間に渡る大会期間中、大きな天候悪化もなく、無事終了した模様です。マイナーな競技ではありますが、最終日に近づくと観戦チケットは完売になるなど、盛り上がりを見せました。


この世界ボート大会では初めてPWC(パーソナル・ウォーター・クラフト水上オートバイ)を使ったレスキュー体制を取りました。漕艇はヨーロッパ等ではメジャーなスポーツの一つになっていますが、アジアではまだまだマイナーな競技です。PWCはそのヨーロッパではとかく敬遠されがち(水路にPWCが走り交うのは迷惑なんでしょうね)だそうで、今回の大会が、PWCの機動性を活かした特徴をアピールできる格好の場にするために、PWSAもがんばって協力したいという経緯もあるようです。PW安全協会(PWSA)は、PWCのメーカー、および販売者からなる業界が、国土交通省海上保安庁警察庁水産庁といった行政組織の指導を受けながら啓蒙活動を推進し、PWC愛好者の安全維持と利用水域の環境保全を目指している団体です。今回はヤマハ(マリンジェット)、カワサキジェットスキー)、BRPジャパン(SeaDoo)各社がスタッフを派遣して運用されますが、私達ウォーターリスクマネージメント協会(WRMA)のPWCレスキューインストラクターはBRPジャパンから委託され、PWCレスキューの知識を持つチームとして、ヤマハカワサキ各ジェッターのみなさんと一緒にボランティアとして活動を行いました。


アダプティブ(障害者選手)の練習中にシングル艇がコースロープにからまり、PWCが緊急で向かったことがありました。指揮時にPWC番号を間違えるなどの混乱もありましたが、その選手は自力で抜けることが出来ましたが、高速で現地に移動できる機動性を活かすことが出来た出来事でもありました。マーシャル艇も近くにいましたが、レスキューアが乗って飛び込んで選手に近づけるPWCはこういうときにとても有効だと思います。下肢が不自由な場合、選手はボートに固定されるため、転覆などが起きれば潜ってベルトを外して脱出させなければなりません。事前の指示では、マーシャル艇から消防に指示があって、桟橋待機の潜水士が向かって、潜水士が確保した選手をPWCが運搬すると聞いていましたが、実際にはそんな時間はないはず。指揮系統の連携が今後の課題かなと思いました。


ボートはFRP製ですが薄く軽量で非常に衝撃に弱く、喫水線が高く波で簡単に浸水するため、接近も出来ませんし引き波もたてられません。PWCはアイドリングでも多少進むので、それで移動しているような状態です。それでも、僅かに出来る引き波にも神経を使い、特にレースのゴール付近では全員がゴールしないとエンジン始動できない状況でした。ゴールでは選手の顔色を近くまで行って確認します。必死で漕いでくる選手はゴールで倒れブラックアウト状態になる場合があり、特に日射も伴うとそれは凄まじいものです。


原則的にマーシャル艇の判断によりPWC指揮本部からの指示で動くのと、レスキューよりもレース優先であるということでどうなるのかと思いましたが、これも各国自国の威信をかけて来ているという国際レースならではかと思います。実際には緊急時はPWC隊の判断でレスキューするでしょうが。PWC統括本部の他に、消防隊(救助、救急、潜水士)が安全要因として行動しますが、消防は「何か起きたら救助に行ける用意がある」という原則で動いていて、我々は「事前に防止する」ことを前提に配置や行動をするということで意見の相違があったようで、話し合いもあったようです。私は8月31日昼前から9月3日午前まで、交代要員として行ったのですが、大会が進むにつれてスムーズに全体が動けるようになってきたと思います。


NHK衛星で放映された最終前日の土曜日には、ピカチュー(注:ニックネームです 笑)がPWCドライバー、私がPWCレスキューアとしてゴールに配置、晴れて暑くなっているのと、決勝でもあるので、さらにレース終了直後の選手の顔色判断が重要となりました。2人乗りのレースである国の選手が2人とも後ろに倒れこみ、1人は起き上がりましたが、もう1人はなかなか起き上がりません。マーシャル艇から「起きろ」の指示があっても起き上がらないので、その場でマーシャル艇よりレスキューの指示がありました。この場合はすぐ目の前にマーシャル艇がいたので、PWC統括と通さずレスキューをすることになりますが、ボートの数mまでしか近づくことが出来ません。ボートは大変高価なもので、選手は命の次に大事にしているようなもので、余程のことがないと自分らで対応するようです。レスキューアが飛び込み、選手にレスキューチューブを巻いて一旦水面に落とし抱えて、PWC後方に取り付けてあるスレッドに乗せて岸まで運搬する形になると思います。飛び込もうかどうかというところで選手が起き上がり、非常に悔しがっていました。倒れていたのは悔しかった表現でした。こういうことは何回か経験していたので、レスキューの指示直後慎重に様子を見てそうなったので、PWC艇の判断でレスキューを見合わせし、事後報告としました。


この3〜4日間を担当した、PWCレスキューの訓練や経験が豊富なカズヤやピカチューと過ごすことが出来て、いろいろ勉強させていただきました。写真は休憩中の3人(左からピカチュー、トモ、カズヤ)です。そうそう、3食弁当というのは参りました(笑)。宿舎は海津苑で、いい温泉が湧いていてのんびり出来ました。が、朝も早いので22時頃には寝てしまいました。